地方銀行、逆転の一手

こんにちは。
倉持建設工業、東京オフィスの山﨑です。

今日は少し、経済の話を。
倉持建設工業のような地方に本社を置く中小企業にとって、地方銀行は重要な存在です。
しかしながら、その足元の経営状況は悪化の一途をたどっています。
昨日、NHKニュースでこんな記事がありました。

「三菱UFJモルガン・スタンレー証券が株式を上場している78の地方銀行のことし4月から6月まで3か月間の決算をまとめたところ46の銀行で最終的な利益が減る「減益」となり、2つの銀行は赤字でした。
これは、全体の6割を占めていて、長引く低金利で本業の融資でのもうけが減ったことに加え、新型コロナウイルスの影響で取り引き先の経営が悪化し貸し倒れに備えた費用が膨らんだことが主な要因です」

大和総研の「収益力強化に向けた地方銀行の課題」という資料によれば、貸出金は地銀がけん引する形で上昇傾向にあり、1998年に140兆円程度だった貸出額は、2014年に350兆円程度まで膨れ上がっています。しかし、貸出金利鞘(利益)はといえば、2.6%から1.4%に下がっています。いわゆるゼロ金利の時代です。
つまり、銀行にとって1998年から2014年は、忙しくなったけどあまりもうからない時代でした。

しかし、その後銀行を取り巻く環境は大きく悪化します。ゼロ金利を超える、マイナス金利時代への突入です。

地銀の本業収益21%減少、マイナス金利0.1%深掘りなら S&P試算

(日経新聞2019/10/30)
日銀がマイナス金利を0.1%深掘りすると地方銀行の本業収益は21%減少する―。米S&Pグローバル・レーティングはこんな試算をまとめた。
(中略)
同じ前提で大手行を対象に試算すると、コア業務純益の減少幅は6%にとどまった。海外での貸し出しや手数料収入を伸ばしており、相対的に国内貸出金利の低下に伴う影響が小さいためだ。
(中略)
2019年3月期のデータをもとに試算すると、地銀の国内貸出業務の損益はすでに49行(77%)が赤字だが、マイナス金利の深掘りで56行(88%)まで増えるという。

 銀行にとって、もっと忙しくなったのに、なぜか赤字という時代への突入です。もう何のために仕事をしているのか分かったものではありません。

しかも、私の知る限り、現在地方銀行が収益の改善を目指して何をやっているかと言えば、貸出しを増やそうとしています。まぁ、銀行だから当たり前だと言えば当たり前なのですが、それでは傷口が広がるだけではないでしょうか?現にメガバンクは貸出金利鞘が収益に占める割合は比較的小さいそうです。ただ、もちろん資本力があるメガバンクをマネをすればいいというわけではありませんし、メガバンクのやり方も早晩立ちいかなくなると思います。

我ながら余計なお世話だとは思いますが、地方銀行が生き残るための、いやないし、地域に必要な存在として今後ますます発展するための方策を考えました。もし銀行関係の方が読んでいたら、勝手にパクってもらって構いません。

クラウドファンディングを知っていますか?

最近、言葉だけは耳にしたという人も多いかもしれません。あるいは積極的に利用している人も。日本では、寄付型のクラウドファンディングが割と知名度を得ていると思います。最近では、コロナ対策の基金に6億もの寄付が集まり話題になりましたし、アメリカでは民主党のクラファンが支援者から送られ、市民が直接政治に参加する大きなムーブメントになっています。

また、ふるさと納税も、クラファンの一種です。例えば僕は東京都文京区に住んでいますが、こども宅食という、生活が厳しい家庭に食事を無料で届けるサービスに少額ながら毎年寄付しています。文京区の市民税から文京区のサービスにお金が移動するだけなのですが、市民が税金の使途を決められるという意味では面白いなと思っています。

ただ、ここで紹介したいのは、多くの人から少額の出資金を集めてプロジェクトを成功させる、という新しい資金調達の手法について、です。

クラウドファンディングに大きく次のタイプがあります。


・寄付型

 クラファン上で寄付を募る手法。モノやおカネのリターンがないパターン。

・投資型

 クラファン上で出資を募る手法。投資成果がリターン。

・購入型

 クラファン上で制作費用を募る手法。制作物がリターン。


寄付型ではなく、購入型のクラウドファンディングも、日本では注目を集めています。

国内でいえば、NO.1のCAMPFIREやサイバーエージェントのMAKUAKE、変わり種では吉本興業のSILKHATなどがあります。これらのクラウドファンディングでは、数百万から数億の資金調達に成功しており、地方銀行の取り扱い案件と比較しても遜色ない規模感があります。

僕自身はKickStarterというアメリカのクラファンに参加しましたが、目標額に達すると、自分が投資した製品の進捗などが日々メールで送られてきて、一緒に開発をしているような気持になります(その製品自体は失敗しましたが)。

クラウドファンディングは、まったく新しい資金調達の形、というわけではありません。むしろ、出資という銀行の機能の核心と言えるのではないでしょうか?キリスト教の教会は銀行のような機能を持っていて、巡礼者は各地に教会があることで、安心して巡礼ができたそうです。同じキリスト教徒として信頼できるというわけですね。

株式の始まりは、大航海時代の共同出資だと言いますし、江戸時代は村の代表がみんなのお金を集めて旅行資金とし、伊勢神宮に行ってたそうです(ブラタモリで見ました)。

僕が強調したいのは、これらのクラファンは5%~15%程度の手数料を取っているということです。銀行の金利鞘と比較して、圧倒的な比率です。なにより、自分たちがどんなものに投資しているのか、納得して投資してもらえる仕組みだと思います。

つまり、地方銀行はクラウドファンディングのプラットフォーマーになるべきだと思います。クラファンはほとんどが、スマホやPCで参加するものですが、地方銀行なら、そうしたオンラインでの交流に慣れていない人でも参加させられそうな気がします。

何より、地域課題を吸い上げ、地域のために何かができるようなクラウドファンディングは、地方銀行ならではの特色ある物になるのではないでしょうか?

例えば以下のようなものが考えられます。


(例)

案件:地域のスポーツ大会(野球でもバスケでも)をオンラインで視聴できるサービス

リターン1 オンライン観戦チケット

リターン2 選手からのサイン入りグッズ

リターン3 両方

     

案件:公共の建物(小学校や県庁舎など)の屋根に太陽光パネルを設置するサービス

リターン1 太陽光発電により削減された電気代から一定率をリターン

      (5万円投資すると、1000円が毎月もらえるくらいのイメージ)

リターン2 災害時のクラファン優先コンセントの利用


案件:有名講師によるオンライン授業を開設するサービス

リターン1 オンライン授業の受講権

リターン2 子どもたちからの反響(非公開サイト)へのアクセス権


こういったサービスは、地方経済への振興だけではなく、サービスの充実という意味で、大きな意味があるのではないでしょうか?

是非こうしたサービスが地方銀行から立ち上がってくることを願ってやみません。


東京オフィスからは以上です。


※地方銀行 正確な定義では、一般社団法人全国地方銀行協会の会員である銀行。しかし、第二地方銀行を含んで扱われることが多く、本人たち以外にはあまり意味のある区別ではない。そのため普通は、都市銀行と言われる5行(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行)以外の銀行、という意味で使われる


※ゼロ金利政策 政策金利をほぼゼロにする金融緩和の最終到達地点・・・と思われていた通過点

※マイナス金利政策 お金を貸しているのに金利を取られるというもうよくわからない金利のこと。金利はお金の価格なので、日本円の価格はどんどん目減りしているのに、なぜ物価が上がらないのか、には諸説あり。



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