こんにちは。
倉持建設工業、東京オフィスの山﨑です。
このシリーズでは、実際に現場で起こって頑張ったことを、当時の記憶を思い返しながら、極力包み隠さず書いていきたいと思います。
なお、一応、顧客名とか現場の詳細はぼかします。迷惑かかってもあれなので。
第一回目は岩手県の某太陽光発電所工事です。
まだ僕が前職の電気工事会社にいたころの話です。
2019年の11月に、Rというひたすら陽気なスペイン人の友人から連絡がありました。岩手県で太陽光発電所の工事をしている友達がいるんだけど、電気工事会社いないので手伝ってくれないかという話でした。
内容はよくわからないけど、22MWの工事だということで、200KWくらいなら内容わからなくても軽く返事できるけど、22MWの内容不明工事は二つ返事できない、と伝えると、責任者と会ってくれと言われました。たぶん、面倒になったんだと思います。
Jという、スペイン人の責任者に、忘れもしない品川駅のスタバで会っていろいろ話を聞くと、2020年の3月連係工事で、すでに着工している、という話でした。
J「電気屋はいるんだけど、彼らはDC工事しかできなくて、SHO(僕のこと)にはAC工事をお願いしたいんだ」
僕「DC工事しかできない電気屋???」
DC工事って、太陽光以外では超マイナー工事なので、そんな会社が存在するのか、と思いながら図面を開くと、Jの言うAC工事とは総長4.3kmの特別高圧電線埋設工事でした。しかもそのうち2.3kmは公道下の自営線です。
僕「一応聞くけど、このうちのどのくらいが終わってるの?」
J「? いや、SHOが全部やるんだよ」
僕「いや、まぁいいや。で、3月にどこまで終わらせたいの?」
J「? 全部だけど?」
これは手に負えない。
すぐに倉持建設工業の倉持専務に電話しました。
僕「専務、岩手って好きですか?」
専「ちょっと何言ってるかわかりません」
専務がすぐには動けないが、12月に入ったらいけるというので、僕だけ先に岩手に行くことに。専務は後から行くと言って前年の忘年会をすっぽかしているので、不安で仕方なかったのですが、赴任しました。
しかしここで問題が。
いつも一緒に仕事をしている前田さんが、岩手に来れないというのです。
僕「どういうことです!なんで来れないんですか??」
前「現場が忙しい!」
僕「誰の現場ですか?僕よりその現場が大事なんですか!」
前「お前の現場だ!」
ということで、当たり前ですが、年末です。
僕も日ごろ遊んでるわけではないので、結構工事を抱えていました。自分の工事を人にお願いしているせいで、自分が岩手に行く羽目になるというよくわからないことになってしまいました。
前田さんを騙して3日だけ現場に来てもらって工事の段取りを決め、あとは電気工事なんかやったことない、土木の人たちと僕でやることになりました。22MWの特別高圧工事するのに、電気の有資格者が僕しかないのです。いじめです。
とりあえず、いきなり公道は怖いので、場内の掘削工事をしながら、図面を確認していると、おかしなことに気が付きました。
配管がない?
断面図には、掘削工事と、埋め戻し深さなど色々書いてあるんですが、配管が書いてないのです。ドイツ人の設計に話を聞くとこういわれました。
「ケーブルは直接埋設だよ」
なるほど、直接埋設か。なるほどね。ん?
いや、場内はいい。掘削したところを開けっ放しにして、上からケーブルを放り込んでいけばできる。でも、公道で直接埋設ってどうやるの?
というのは、普通、ケーブルの埋設工事は、先に電線管を敷設して埋め戻しして、その中にロープなどを入れてケーブルをひっぱります。公道は当然ながら開けっ放しにしておけないので、配管をちょっとづつ掘っては埋め掘っては埋めして、あとからケーブルを引き込むわけですね。たぶん、道路工事とかで、水道管の工事とか、見たことある人もいるのではないでしょうか?しかしドイツ人の彼はこんな風に言いました。
「SHOは難しく考えすぎだよ。道路を開けっ放しにしておいて、ケーブルを入れるだけだよ。簡単だよ」
できるわけねーだろ。
車とか、動物とか、子供とか、片っ端から落ちるわ。
何なら雪降ってるしね!
彼らの計画では1kmくらい掘りっぱなしにして一気に線を入れていけばいいや、みたいな感じで、まぁ、海外ならそれでいけるのかもしれませんが、日本でそんなことをしたら役所に怒られます。
そこで急遽会議。
ドイツ人、スペイン人、イタリア人という無駄に国際色豊かな元請会社にこんこんと説明をします。しかし説明しながら僕は気づいてしまったのです。
そもそも道路占用許可の断面図に、配管の記載がないことを。
ちょうどその頃、おっとり刀で現場に現れた倉持専務に、僕は冷酷に告げたのでした。
「専務、役所言って占用許可取り直ししてきてください」
しかしこれが、長きにわたる市役所との壮絶な闘いの幕開けになるとは、この時の僕たちはまだ知る由もなかったのでした。
(続く)
(2019年11月25日撮影。着工当初の様子。まだ架台の杭の一本も打ってない状況に戦慄を覚えた)
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