こんにちは。
倉持建設工業、東京オフィスの山﨑です。
金曜日はエンタメデイ。
今日は僕が読んだことがあるマンガ・アニメの中から、次の作品をご紹介します。
うしおととら 藤田和日郎
僕が一番好きなマンガを一つあげろと言われたら、悩みに悩んで、一週間くらいもう悩んで、なんでそんな残酷な質問をするんだと思いながら、涙ながらにこの作品をあげると思います。
だいたい、僕の人生において必要なことの70%くらいはこの作品から学びました。そのくらい思い入れのある作品で、コミックは全巻持ってましたし、今はスマホの中に全巻入っています。
そもそもバリバリのジャンプ派だった僕がこの作品に出合ったのは、家族旅行中のフェリーの中でした。めちゃくちゃ暇で船酔いしてたので、マンガでも読んで気を紛らわそうと思ったのですが、売店にサンデーしかなかったので、仕方なく読んだことのなかったサンデーをぱらぱらと捲ったのでした。
「汝歪んだ夜より来る」という、吸血鬼が適役で出てくる話だったのですが、独特の引き込まれる絵柄と屈指の人気キャラである符呪師・鏢のマジギレ顔に目が釘付けになったのを今でも克明に覚えています。
(お前は子どもを殺した。理由はそれで十分だ!は名言ですよね)
うしとらのレビューを書こうと思ったら、200万字くらい必要なのですが、ここは心を鬼にして2000字くらいに収まるようになるべく努力します。2000字程度で僕の作品に対する愛情が伝わるかどうかは甚だ疑問ですが。
全33巻あるので、すべてのエピソードを取り上げるわけにはいきません。
今日は、コミックスで言えば15巻。
『時限鉄道』について取り上げたいと思います。なぜなら、この話、学校や職場での教育、指導を考えるうえで、非常に重要なことを教えてくれるからです。
うしおととらの主人公は、中学生の蒼月潮(あおつきうしお)少年で、獣の槍と言う魂を削る代わりに妖怪をやっつける力をくれる槍に選ばれた少年です。(ハードな人生です)
そしてその槍で500年間封印されていた、強力な妖怪(とら)から命を狙われながら、不思議な友情のようなもので結ばれた相棒として、各地の妖怪を倒していく話です。
ただ、この『時限鉄道』の主人公は、うしおと同年代の、野村くん、という一人の少年です。
野村くんは厳しい両親に育てられ、家庭内でうまく行っていませんでした。自己肯定感が低く、学校でもいじめられています。いつも明るく、友達も多いうしおとは正反対のキャラクターです。うしお自身も「ああいうやつ苦手」と言っています。
不登校になり、担任の先生が連れ戻しに行った帰りの青函トンネル内で、うしおたちと出会い、そして、その列車が『山魚』という妖怪に襲われたのです。
山魚は、当時読者からの募集で選ばれた妖怪でした。(僕も応募しました。箸にも棒にもかからなかったです)
一切の攻撃が通用せず、ひたすら巨大で、不気味で、理不尽な暴力そのものと言った妖怪で、うしおととら史上においても屈指の強敵です。(大好きです)
果敢に戦う、うしおと違い、野村くんは震えていることしかできません。山魚を倒すには、日の光に当てるしかないのですが、そうすると大爆発を起こすので、なんとか車両から切り離さなければならないのです。
列車を止めれば皆殺しにされるので、完全に時間との勝負。
列車内はパニックになり、戦っているうしおとうしおの父親(蒼月紫雨)が責められる場面もあります。(凶羅の話は省きます。凶羅も大好き)
最終的には、全員の手をつなぎ、法力を増幅する技(穿心角 降魔捨法 威颶離)で倒すこととなり、苦痛とひょっとしたら障害が残るかもしれないこの技に、列車内のみんなが参加します。うしおととらが足止めしている間に、威颶離を当てる作戦です。
みんなが一致団結し、高揚感にも似た光に包まれる中、野村くんはその輪に入れず出ていきます。
「また、逃げるんか?」
そんな野村くんに、うしおの父親が声をかけます。
野村くんはみんなの様に頑張れません。声も出せません。ただただ怖くて震えることしかできないのに、人前ではそれすらできないのです。
そんな野村くんに、命がかかっているとは思えない穏やかな口調で紫雨が言います。
「野村くんよ…トンネルってよ、いやあな時みたいだなァ。一人っきりで寒くてよ…でもな」
まさにそのトンネルの中、絶望とさえいえる山魚に、うしおが対峙します。うしおはそれを貧乏くじなどとは考えません。列車を見捨てれば自分だけは助かるでしょうが、1mmもそんなことは考えません。絶対に勝てない相手なのに恐怖もありません。
「いつかは抜けるんだぜ」
激戦になります。うしおもとらも満身創痍です。
野村くんはと言えば、「いいなぁ…いいなぁ…」と前向きに頑張れる人たちを羨みながら、自分の体をかき抱いて泣くことしかできません。
その中で、山魚の攻撃で法力の輪が途切れます。あと、ほんの少し。あと二人分のスペースが埋まりません。とっさにうしおがそこに入ります。それでもほんの少したりません。
山魚は本能だけの妖怪です。その攻撃に容赦はありません。その山魚が薄ら笑いをうかべながら、人間たちの努力をあざ笑うように、すべてを破壊しようとしたとき。
野村くんがその間に入ってきました。しっかりと、うしおの手を握ったのです。
「穿心角 降魔捨法のいちぃ! 威颶離!」
見事に山魚は打倒され、列車はトンネルを抜けたのでした。
書いててちょっと目が潤んできましたが、本当に感動的な作品です。あんなに根暗でいくじなしの野村くんが、自ら法力の輪に飛び込む姿は、僕らに勇気を振り絞ることの大切さを教えてくれます。
この話には後日譚があります。十数年後、野村くんは教師になっていました。そして、自分の様にいじめられている少年を気遣っています。
「またいじめられたんか」
という野村くんに、生徒は「先生にはわからないよ」と言います。
そんな彼に向って、野村くんは穏やかな口調で、こう言うのです。
「嫌なときってトンネルに似てるよな」
東京オフィスからは以上です。
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