シン・ドカタ 第三章 ドカタ2.0

 

去年の熊本地震は大変な災害となった。

土砂崩れをおそれ、重機での作業すら困難を極めた。

そこで活躍したのが、無人化施工機だった。

遠隔操作で稼働できる3台のバックホウが、進入路の開削などで活躍した。

無人化施工機が普及しないのは、乗り込んで操作したほうが明らかに操作しやすいからであるが、操作性を損なわずに遠隔操縦できるならどうだろうか?

5Gの時代にはそれが起きるとされている。人はどんなに遠く離れたところからでも、100分の1秒という人間にはもはや知覚出来ないほどのラグで重機を操作できるだろう。


また、昨今のGPS測量技術の進歩はめざましく、ただしく位置情報を入力したならば、ICT建機は正確に図面通りに工事が出来る。もし50cmバックホウで掘削する図面であれば、あなたは何も考えずにレバーを倒すだけでいい。バックホウのバケットは絶対に50cmよりも下がらない。


この遠隔操作とICT技術を組み合わせれば、もはや我々は現場に行って作業する必要がなくなるかもしれない。朝起きてコーヒーを飲み、PCの前に座って好きな音楽でも聞きながら重機を操作できるようになるかもしれない。遠隔操作の難点は重機の状況がわかりにくいことだが、ICT建機はあなたよりもはるかに正確に、自分の状況を理解している。


これは世界中で起きていることだが、若い人材は建設業界を敬遠している。そこで人材不足に陥ったこの業界は、どんどん人間がいなくてもできる現場を目指している。

ここまで聞くと、事務所の未来と同じ未来をあなたは想起するかもしれない。

ロボットによって取って代わられる未来だ。

しかし、設計、測量、工程管理、品質管理、施工図の作成などの、いま現場監督がしている仕事は、これまでよりも重要性を増すだろう。これまでは、優秀な下請け会社に任せておけばすべての工事が滞りなく終わっていたかもしれないが、今後は完全に現場監督の力量で現場の良し悪しが決まる。

現場監督はGNSS測量をよく理解し、図面データをICT建機に読み込ませることが出来て、それらが効率よく仕事をできるように作業工程を組み立て、適切な品質を保てるように校正や管理を適切に行い、最終的な仕上がりを検査しなくてはならない。

検査だって、ホローレンズのようなAR技術を使えば、現場に行かなくてもできるようになるかもしれない。その場合、いかに見やすいAR図面を作るかが、現場監督の力量の見せ所になるだろう。


このようにドカタは変わっていく。だが、もちろんすべてのドカタが変われるわけではない。ドカタは、ドカタとドカタ2.0とに別れるだろう。両者の運命は、全く違うものになっていく。

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