シン・ドカタ 第四章 自信を持とう。だが気は抜くな。新生できないドカタもまた死ぬ



建設業界はずっと足踏みをしていた。
バブル崩壊後の日本の低迷は、イコール建設業界の低迷だった。コスト削減が当たり前で、新規の技術開発に割く予算はない。
いつの間にか世界最高だった日本の技術は、時代遅れの産物にまで落ちぶれた。

日本の建設機械は進化を止めた。
バックホウは便利で何でも出来る機械だった。
職人の技術さえあれば、バックホウ一台であらゆる工事が可能だった。
一方、海外では重機のバリエーションが進化した。誰かが出来る工事から、誰もが出来る工事に時代は変わっていった。

測量は特殊な技術で、独占技術だった。測量誤差は測量につきもので、それを修正するのが経験のなせる技だった。
一方海外では、人工衛星を使ったGNSSが普及した。その誤差は500円玉一つ分という恐ろしい精度で、地球上のあらゆるポイントを、どんな場所からでも特定できた。確かに日本の測量技術はすばらしい。でも、一つのポイントを出すために、数時間を要する。GNSSは、5秒でその仕事を終える。

更にドローン測量は測量の常識を変えた。点群という位置情報を含む無数の画像データを処理することで、我々は正確に地形を把握できるようになった。職人の経験で仕事を初めて、最終的に「まとめる」仕事から、計画通りに仕事をするという当たり前のことができるようになった。それは未来の話ではない。海外の今だ。

だが、全てはここから変わっていく。
歴史を紐解いてみてみよう。
中国大陸から文字と稲作が伝わったあと。
明治維新とその後濁流のごとく押し寄せた西洋技術と文化。
第二次対戦の敗北と焼け野原からの再生。
日本はいつも這いつくばって、打ちのめされて、それでも立ち上がってきた。
今度もきっと立ち上がれる。
日本の建設業は、きっと変わる。
再び世界最高峰の技術水準に返り咲く。
私はそう信じている。





だが、それでも、そのとき、すべてのドカタが報われるわけではない。
すべてのドカタが先に行けるわけではない。
この先は、ドカタの道は2つに別れる。
ドカタと、そしてシン・ドカタと。

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