世界戦を考える

こんにちは。

倉持建設工業の山崎です。



当社では再生可能エネルギー関連の工事受注に力を入れており、お陰様でコロナ禍においても売り上げを伸ばしております。

英語をはじめとした国際語で対応できるという当社の長所を活かすために、今年は外国語人材の獲得に力を入れ、概ね良い結果を得られています。

しかし現在の試みは、日本に投資を行う外資系企業の仕事を受注するという目的であり、今後電力需要は増えていくでしょうが、人口が確実に減じていく日本において、建設業が十分な収益源であり続けるかは不明瞭です。

現に、同じ建設業でも、公共工事を主な収入源としていた企業は軒並み大変なことになっているそうです。公共サービスにかけられる予算は完全に人口に依存していますから、今後はもっと難しくなっていくでしょう。

一方で、業界以外の方にはなじみのないお話だと思うのですが、日本で大型の太陽光案件を受注する企業は、圧倒的にスペイン企業が多いです。これにはいろいろな歴史的背景があるのですが、日本に投資を行いたい海外資本が、スペインのEPC(ゼネコン)を好む傾向があることは、まぎれもない事実です。というより、単純に国際語ができない日本に発注することが難しいという事情が大きいと思います。

スペインのEPCはスペインの作業員を選好するので、今や太陽光パネルや架台を設置する機械工事業者は、ほとんどがスペイン(語)系の建設会社や作業員となっています。

例外は、土木工事と電気工事です(あ、測量は完敗です。勝てる見込みはゼロです)。

日本で建設の仕事をするなら、①周辺自治体との協議、②電力会社との協議、③建設業法等法令の遵守、④電気事業法の遵守、は必須です。

しかしこのほかにも、近隣住民には迷惑をかけない、とか、工事着工前には役所に挨拶に行く、とか電力会社の担当者とは何度かやりとりをして連携日等を打ち合わせしておく、などの明文化されていない「決まり」がたくさんあります。

ヨーロッパやアメリカと違って、日本では紙に書いてあることよりもこの「決まり」が優先される傾向にあります。ただ、スペイン人には知る由もないので、多くの場合こういったトラブルで失敗しています。

日本の一般的な建設会社ならこうした処理はお手の物なので、彼らとしても土木工事と電気工事は日本の企業に頼むしかないのです。

しかし、問題があります。

日本の建設業界は多重下請け構造になっています。元請ー1次請ー2次請ー3次請という感じです。業界にいる僕たちは、社名や実績を聞いたり、代理人と話したりすれば、この会社は元請ができる会社だな、とかせいぜい3次だな、ということが分かります。

一概には言えませんが、まともな現場であれば、次数が少ないほど管理能力が高いと言えます。元請ができる会社は、現場の把握が完全にできる会社です。3次しかできない会社は、自分の施工範囲しか管理できない会社です。

そして外国企業にこれを見抜く力はないので、せいぜい3次程度の会社に土木や電気の全工事を発注し、失敗している例によくでくわします。

我々からしたらなんでそんな会社に発注したの?打ち合わせの時点でこいつらダメだなと思わなかったの?と思うのですが、そもそも日本語が理解できないし、業者も英語の図面を理解してないので、最初から意思疎通ができていません。


前置きがながくなりましたが、当社が海外に進出する、となった場合、同様の問題に直面する可能性が高いです。人のふり見てわがふり直せと言いますが、彼らの失敗をよく観察しておくべきだと思います。

彼らが一番苦労しているのは、どうやら人材です。下請の選定や現場管理をできる人材が不足しているようです。これはわかる話で、スペインでも優秀な技術者は本国で十分に仕事があるでしょうから、海外に進出している企業はスペインで特に優秀な企業ではないでしょう。うちの会社がIHIや鹿島建設ではないのと同じです。

また、彼らはスタッフをスペイン語ができる人で固めています。しかし日本で建設業の優秀な技術者を見つけるだけでも大変なのに、その中でスペイン語ができるとなると、断言しますが、絶対にいません。

以上のことを踏まえると、例えば我々がインドネシアで仕事をしたい、というときに、日本人だけのスタッフで現地に行って、現地の下請けと契約して仕事をする、となると、たぶん詰みます。現地の人なら絶対に落ちない落とし穴にきれいに落ちていくことでしょう。

かといって現地で優秀なインドネシア人を雇用したとしても、言葉と文化の壁ですぐに完ぺきなコミュニケーションがとれる、というわけにはいかないでしょう。

結論として、当社にとって重要なのは、より多くの外国語人材を採用し、建設業の知識を教え込むということだと考えます。

ということで、今後は海外のクライアントに今以上に積極的に営業していくつもりです。アジアはヨーロッパから遠すぎます。日本に優秀な建設会社があり、多言語に対応していれば、彼らには魅力的に映るでしょう。

東京オフィスからは以上です。

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