僕たちはもう滅んでいる

こんにちは。

倉持建設工業、六本木オフィスの山崎です。

我ながら、ちょっと物騒なタイトルでお届けします。




はじめに


最近、堰を切ったように日本の人口減少問題が様々なメディアで取り上げられてきました。いい加減もう目を背けることができなくなってきたのでしょう。

少子高齢化と人口減少が同時に起こった世界で最初の先進国である日本。この問題がようやく人々の関心に上ってきたことは、前向きに捉えてもよいのかもしれません。

しかしながら、まだ間に合う、まだ時間がある、今やらないと、という様な論調が多いことに疑問が尽きません。

僕の見解では、もうすでに対策が可能な時期は過ぎてしまったと思います。人口動態にウルトラCはありません。人口動態は、様々な統計の中で、もっとも予想が当たりやすいと言われています。
今日、突然出生率が上がったとしても、その子供たちがまた子供を産むようになるまで20年かかります。
アメリカのElon Muskがtwitterで、"At the risk of stating the obvious, unless something changes to cause the birth rate to exceed the death rate, Japan will eventually cease to exist. This would be a great loss for the world"(当たり前のことを言うが、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ消滅してしまうだろう。それは、世界にとって大きな損失である)と呟いて話題になりましたが、これは至極当たり前のことです。数学的な帰結です。

もう僕たちの滅亡は回避できない決定事項である、と考えるしかありません。この問題はテーマを変えてなんどもこのブログで取り上げてきました。今回は僕なりにそれを一つのレポートとしてまとめていきたいと思います。


なにがいつ具体的に起きるか


国土交通省の「2050の国土に係る状況変化」によれば、今から28年後の2050年、日本の人口は1億人前後まで減少します。

これだけ聞くと、なんだまだ1億人も残っているじゃないか、何とかなりそうだな、と思ってしまいそうですが、人口がピーク時よりも2割減るということは、普通では考えられないほどのインパクトをもたらします。

同資料によれば、2050年において総人口は減少しますが、高齢化人口はむしろ増加します。総人口は2000万人減るのに、高齢化人口は450万人増えるのです。


2050年の高齢化率は実に37.7%。15歳未満人口はわずか10%。これがたった28年後のこの国の姿です。

一般には高齢者は地方に多く、都市部には若者が多いと思われがちですが、絶対数では次のような図になります。


高齢者はむしろ都心部に集中します。これまでは高齢化は地方の問題とされてきました。しかしむしろ出生率が低いのは都市部であり、2015年にわずか19%に過ぎなかった首都圏の高齢化率は、2050年には55%を越えます。


そのため、わずか18年後の2040年には、なんと単身世帯が日本における最大の構成世帯となります。子供のいる家庭は23.3%まで低下。日本におけるマイノリティーとなってしまうのです。


4割もの人が、たった一人で暮らしている社会です。

しかし、これはまだ日本全体の話であり、滅んでいる、というにはまだ大げさだと思うかもしれません。ですが、地方に目を向ければ、それが言い過ぎではないことがお分かりいただけると思います。

同資料によれば、558市町村(全市区町村の約3割)の人口が50%を切り、そのうち21市町村が25%未満となります。およそ3割の自治体で人口が半分になり、その半分の半分は高齢者、という世界観です。
これは居住地域でみるともっと顕著となります。全国の居住地域の50%で人口が半減。3大都市圏を除くすべての地域で人口減少は加速します。


どんな不都合が起きるのか


しかし、これらの問題も、今生きている我々には関係なくも思えます。子供たちが大人になる頃は大変そうですが、大変なりになんとかやっていけそうにも思えます。
しかし事態はそんな甘いものではありません。
この後は具体的にどんな不都合が生じていくのかを考えていきたいと思います。

1.生活サービスの破綻


最近、地方の自治体では百貨店の撤退が相次いでいます。ECや通販の普及、ライフスタイルの変化、様々な要因が言われますが、実は百貨店の維持には225,000~275,000人の人口が必要だとされています。
このように、サービスの維持にはそれを持続させるサービスの受け手の人口が必要となります。これを産業の存在確率と言います。

同資料から特に生活に必要そうなものを抜粋します。

1.総合スーパー 47,000-62,500人
2.有料老人ホーム 27,500人-62,500人
3.フィットネスクラブ 32,500-52,500人
4.ハンバーガー店 27,500-42,500人
5.病院 17,500人-22,500人
6.訪問介護事業 6,500人-22,500人
7.葬儀業 6,500人-9,500人
8.通所・短期入所介護事業 1,000人-7,500人
9.コンビニ 2,200人-3,800人

ちなみに今現在、1700あまりある地方自治体の内、500自治体(28.7%)が1万人を切っており、300自治体(17.2%)が5000人を切っています。
そして、この500自治体は2050年に5,000人を切る公算が高く、実に47.3%の自治体の人口が1万人を割り込みます。
日本の半分近くの自治体から、上述のサービスの1~6は姿を消すことになるでしょう。

2.インフラの破綻

国土交通省の別資料、「社会インフラの維持管理をめぐる状況」によれば、「公共発注工事における維持管理に係る工事の割合を見ると、1990年代にはおおむね15%程度で推移していたが、その後は傾向的に上昇し、近年では3割近くを占めるようになってきている」そうです。

つまり、インフラの維持管理が公共発注工事に占める割合が、30年で倍になっています。当然ながら、既存のインフラ設備は高度経済成長期に整備したものが多く、老朽化が進んでおり、維持コストはどんどん増えていき、地方財政を圧迫していくことになります。

当然ながら、地方自治体はインフラ設備を解体していく方向になってきていて、難しい選択と集中に悩んでいます。

いずれにしても、人口減少が著しい地域からインフラが消滅していくでしょう。例えば小学校が消滅した自治体に、子育て世帯が居住することが不可能なように、インフラの消滅はその自治体の人口減少に拍車をかけます。
同資料によれば、維持管理を行う事業者は小規模な建設業者が多いそうです。そうすると大きな建設業者はその自治体から移動しなければ仕事が難しくなるかもしれません。
そうすると、雇用がなくなり、飲食店やスーパーなどで落ちるお金も減っていくでしょう。
消滅は静かに地方から始まっています。

繰り返しますが、これを防ぐ手段はもうありません。もう手遅れなのです。


では今なにができるか


1.未来に可能性をつなげる

滅亡は不可避として、それでも将来世代のためにできることをしていくことが大人の義務だと思います。子供たちにしてあげられることでは、以下のようなことが思いつきます。

①英語やスペイン語、中国語などの国際語を習得させる

日本語を話す人は今1億2000万人ですが、2050年には1億人を切ります。しかし世界人口は2100年までは増え続けると言われていて、世界的には、マーケットは拡大していく一方です。国際語を習得すれば、世界のマーケットにアクセスできます。
また、すでにNetflixなどでその兆候がありますが、日本人の人口が減れば減るほど、日本語化される作品やサービスは減っていき、情報や娯楽の質も下がっていきます。
先ほどから話している人口動態を考えれば、今後日本国内で生み出される情報や娯楽は、マジョリティである高齢者向けのものになるでしょう。
国際語を習得すれば、少なくとも情報や娯楽の質は落とさずに済むと思います。
日本語をしゃべるとか漢字を書ける、というのは、そのうちマイナーな趣味になるでしょう。

②子供たちの多様性を受け入れる

よく言われることですが、日本の教育体制は高度経済成長期の、同じ労働を文句なく均質にこなす労働者を大量に市場に派遣するための制度なので、誰かの指示通りに大勢で仕事をする人材の育成には向いていますが、少数のクリエイティブが生産的な仕事をするような人材の育成には、思い切り不向きです。
1億人の同じような考え方、職業、能力の人を集めても、Elon Muskには太刀打ちできません。
算数国語理科社会を満遍なくできる子ではなく、異様に虫に詳しいとか、足の速さは誰にも負けないとか、一日中でも本を読んでいられるとか、特異な能力を伸ばしてあげる、大人の寛容さが必要だと思います。


2.海外に対してもっとオープンになる

日本の人口が減っていき、消費も投資も減少していくなら、海外からの消費や投資を増やしていくしかありません。
幸い、日本は先進国の中でも有数の観光ポテンシャルを持っていると言われています。
自然があり、インフラも整っていて、地方のどこにいっても(今のところ)一定の品質のサービスを受けられます。
また、円安とデフレで価格が安いのも魅力的です。
今後、金融や物流の拠点として日本が注目される可能性は十分にあります。
主に以下のような産業に力を入れていくべきではないでしょうか?

①観光業

観光業は、コロナ前は世界で最も伸びいている産業と言われていました。日本でも観光業に力を入れた結果、年間4000万人のインバウンドという目標も達成間近でした。
観光業のいいところは地方のポテンシャルが生きることで、観光誘致がうまくいけば、地域を存続させる商圏を形成することも不可能ではありません。
日本の最大の弱点は国際化なので、日本人目線ではない、海外からの目線で観光戦略を設計することが重要です。

②物流(サプライチェーン)

物流拠点として日本をとらえると、多くの利点があることに気づきます。まず海運国である日本には物流に利用できる港がたくさんあります。LNGの再気化基地が豊富にあることも強みとなることがあるかもしれません。今後地政学的により難しい状況が予想されるシーレーンに関しても、日本は長い歴史と実績があります。
また、コロナ化もあり、成田空港が航空貨物の拠点として整備されつつありますが、日本の地方空港を同様に航空貨物のハブとしていくことも可能かもしれません。
日本には世界に誇る鉄道網もあり、例えば複数の国や地域からの資材を複数の方法で日本に集め、鉄道で集積し一か所でくみ上げ、アジアに再輸出する、というようなことは日本以外ではなかなか難しいのではないでしょうか?
日本は人口密度が高く利用できる土地が少ないことが長く問題でしたが、人口減少はこの点追い風になります。
複数の経済圏を結ぶハブのような役割は、治安のよい日本には適したビジネスであると思います。



以上、今思いつく限りのことをだらだらと書き綴ってしまいました。
滅ぶ者には滅ぶ者の振る舞いというものがあるものです。
案外と、Scrup & Buid の末に出来上がる未来というものもあるかもしれません。
ここで一回滅んでおけば、少子高齢化と人口減少で苦しんでいる2100年の世界に、手を差し伸べることができるかもしれませんよ。




六本木オフィスからは以上です。

コメント