茨城県補完計画 第弐話 茨城県総合計画

 

茨城県総合計画。各都道府県は、県民に広く県の指針を知らしめるため、総合計画を策定しています。

茨城県の現知事も、平成30年11月に総合計画を発表しています。当時私はその内容を読み、そしてうなりました。当時の私はあるところでこう書いています。

特に茨城県の企業に有用と考えられるのは、茨城県を5つの地域に分割し、地域ごとの課題と対応策を打ち出していることです。はっきり言って、地域によってはかなり耳が痛い内容を含んでおり、これを発表したこと自体が、県の本気度を物語っています。

 何が耳が痛いかと言えば、当時の総合計画には、県北、県央、県南、県西の各エリア、それぞれの総生産、人口動態、高齢化率を可視化して提示していました。これはかなりの勇気がいることです。しかし、その後の経緯を私は知りませんが、現在の総合計画からはこのページがすっぽり抜け落ちています。非常に残念なことです。

まぁ、とっておいたからいいのですが。

以下が、各地域の状態を可視化した資料の魚拓です。県北だけはとってないのですが、かなり大変な数字だったのを記憶しています。当時の私のコメントも付記しておきます。自分でもびっくりするくらい辛口です。

 

現状ですでに県南に数字で負けており、勢いでも負けています。正直言って具体的なインフラ整備の方策がなければ、この地域が浮上することは難しいのではないでしょうか?

「県都水戸を中心に,人・モノ・情報が活発に行き交い,北関東の発展を先導する中核的な都市圏を形成するとともに,周辺地域との強い連携体制を構築した産業拠点として発展しています」

とありますが、実際に即しているとは言えません。総生産に占める割合は現状23%であり、高齢化率が26.1%→41.7%になっていく社会で、この数字が改善する見込みはありません。行政の中心であることを考えても、もっとも変革が難しい環境と言えるでしょう。


県央よりもさらに状況が厳しいのが県西です。行政的にも県央のデッドコピーであり、変革に前向きとは言えません。高齢化率の進展も県央といい勝負です。

しかし県西に関しては、「東京圏への近接性や,4車線化を進める首都圏中央連絡自動車道等を最大限活用し,さらにインターチェンジ周辺の産業基盤整備を進め,地域を牽引できる企業の立地を促進し,新たな産業拠点づくりを進め」る、「地下鉄8号線の県内延伸に向けて,市町の開発計画等と連携を図りながら定住人口・交流人口の拡大に取り組み,鉄道整備が必要とされる地域づくりを進めるとともに,公共交通機関の利便性向上や広域交通ネットワークの充実により,災害時も含めた東京圏や隣接する地域との連携強化を図」るなど、具体的なインフラ整備に関して言及しています。

地下鉄8号線延線は、そもそも住吉~豊洲間すら構想段階なので難しいと思いますが、県としては県西地域を他県との玄関口と考えているようです。たしかに、TXの守谷駅がある守谷市は常総市と隣接していますし、坂東市には圏央道のICが、筑西市は新幹線の駅がある小山市と隣接していますので、県西地域を他県との玄関と考える発想はそう突飛なものではありません。県西はそのポテンシャルを活かし切れていない、という言い方も可能かもしれません。しかし現実的には、県央よりもまし、という程度であり、後述する県南地域のオプションとしての意味が大きくなるのではないでしょうか。

TXつくばスタイルゾーンと県が呼ぶエリアの一人あたり所得が突出しています。東京都の4.43とは比べるべくもありませんが、そもそも3.5を超えるのは、つくばを除けば重工業の比重の大きい鹿嶋だけです。さしたる工業的資源のないつくばエリアがこれだけ高い所得を得ていることはすごい事です。また県南全体で見ても、2050年の高齢化率も39.1%にとどまり、人口も80万を維持しています。すでに総生産の35%程度を占め、行政も過剰な業務量から改革に前向きです。まともな経営者なら、茨城なら県南に店を出すでしょう。


いや、県央と県西に親でも殺されたのかというくらい辛口ですが、当時の私は、「将来的にもそうなのか」と疑問を付しています。

構想路線・鉄道という●や〇のラインを見ると、理由はわかりませんが、県の開発構想が西に寄っているのがわかります。これを見れば、県央についてインフラの言及がなかった理由もわかります。これは、いくつかの解釈が可能でしょうが、本書でも言及があるように、東京ー名古屋ー大阪がリニア新幹線で結ばれることで生まれる、巨大商業圏へのアクセスを増やすことを目的としているようです。

これは、つまり、県南と県西を、県としては、スーパーメガリージョンへのアクセスとして、同質の商業圏と捉えているとも考えられます。

たとえば、前述の資料では、県央の総生産に占める割合は23.2%ですが、隣り合う県南と県西を合わせれば、52.2%を占めることになります。つまり、圏央物流リングという名称で黄色く色分けされているエリア、これが実質的重点開発エリアということでしょう。具体的には125号線の内側の地域です。


当時茨城県の企業に努めていたわけでもない私が何故こんなことを分析しているのか理解に苦しみますが、我ながら的を得た分析であると思います。
つまり、県としては首都圏との接続を重視し、県南、県西に行政資源を集中投下するという基本政策であると考えられます。
まぁ、そりゃああれですね。消去されて当然かも知れませんね。

いずれにしても、次章は今後の茨城の中心について紙面を裂こうと思います。学園都市つくばについて。

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